(流体力学的)きのこの第9仮説

臭いの臭いの飛んでけー!

【注意】
この話は科学に無知な筆者が付け焼き刃の知識を基に書いた、いわゆるエセ科学と同等の記事で、内容的な正確性は未検証です。

第8仮説では虫を使って胞子を運ばせるスッポンタケ科のきのこにおける気流の役割について考察しましたが、スッポンタケ目にはもう一つ大きな勢力としてアカカゴタケ科のグループがあります。形の奇妙なスッポンタケ目の中でもアカカゴタケ科のきのこの奇抜さは中でも群を抜いており、その形状については説明不能なレベルとすら思えるのですが、流体力学をもってその奇想天外なデザインの一端を解き明かすことはできないでしょうか。

Fig.9-1

まずアカカゴタケ科のきのこの形状的な共通点について考えてみましょう。冒頭のカニノツメの写真、また[Fig.9-1]のサンコタケの写真をよく見ると、奇抜さを極めた形ではありますが、腕と呼ばれる複数本の分岐があることと、粘液状の胞子(グレバ)が腕の内側にあるものが多いようです。

これは周辺の草などにグレバが擦れて無駄に減らないよう保護するためと考えることも可能ですが、ここに風が当たった場合に何が起きるでしょうか。

Fig.9-2

まず構造の簡単なカニノツメで考えてみましょう。並んだ二本の腕の正面から風が吹いた場合、風の一部は腕の隙間を通過することになります。腕の間は幅が狭くなっているために通過する風は速度が上昇することになるのですが、ここで今までも何度か紹介してきたように、ベルヌーイの定理により上昇した速度分、圧力が下がることになるのです。

つまりこの時、エンジンのキャブレターにおける燃料と同様、低下した気圧により腕の内側に付いているグレバから悪臭が吸い出され、風下から排出されることになります。悪臭を含んだ気流は隙間を抜けたところで急に失速するとともに圧力が上昇して空気中に拡散し、周囲にいる虫たちに届けられるという仕掛けです。[Fig.9-2]

Fig.9-3

ではもう少し条件を複雑にし、サンコタケのように腕の本数が増えた場合も見てみましょう。

腕の本数が増えても基本的な考え方は同じです。腕の隙間を通った気流は速度の上昇とともにベルヌーイの定理によりグレバの悪臭を引き出しながら内側に入ります。そして再び腕の間を通って外に出る際に、さらに悪臭を吸い出して濃度を上げた後、風下に放出させるのです。[Fig.9-3] さらなる効果としては、カニノツメでは横方向からの風に効力を発揮できないという弱点がありますが、腕の本数を増やすことで、全方向の風に対応でき、機会獲得の確率を上げることが可能となります。

もちろん、アカカゴタケ科のきのこのデザインの超絶的な奇抜さをベルヌーイの定理だけで全て説明することには無理があり、その他にも様々な要素が作用しているものと思われます。しかし一見でたらめに奇抜さだけを誇っているかのようなデザインも、胞子散布という観点から流体力学を当てはめて考えると、そこに合理的な法則性が見えてくるのです。

これが流体力学的きのこの第9仮説、アカカゴタケ科のきのこの一部は、ベルヌーイの定理を応用して迅速に多くの臭いを周囲に拡散させ、胞子の運び手である虫を呼び寄せているというものです。いかがでしょうか。


【この仮説における問題点】

  • カニノツメの中には二本の腕が密着しているものもあり、このような場合ベルヌーイの定理による説明は無理がある
  • 海外のアカカゴタケ科と思われるきのこの中には、腕の形が四角いものが存在し、このような場合は腕の間の隙間は変化しないためにベルヌーイの定理が当てはまりにくい

【参考文献】(敬称略)

『流れのふしぎ』遊んでわかる流体力学のABC
日本機械学会編 石綿良三・根本光正著(講談社ブルーバックス)

『鳩ぽっぽ』初心者のための航空力学講座
Oki (https://pigeon-poppo.com)

『機械設計エンジニアの基礎知識』流体力学の基礎を学ぶ
MONOWEB (https://d-engineer.com/monoweb.html)

『楽しい流れの実験教室』
日本機械学会 流体工学部門 (https://www.jsme-fed.org/experiment/index.html)


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