(流体力学的)きのこの第2仮説

傘のイボイボがもたらすもの

【注意】
この話は科学に無知な筆者が付け焼き刃の知識を基に書いた、いわゆるエセ科学と同等の記事で、内容的な正確性は未検証です。

Fig.2-1

第1仮説ではきのこの傘の風下部分に発生する乱流により、胞子が巻き上げられるのではないかと推測しましたが、現実的な条件を考えるとモデルのように平滑なきのこの傘はあまり存在せず、多くは鱗片や繊毛に覆われたり、イボや溝線といった凹凸が存在します。[Fig.2-1] こういったものが傘の表面に存在した場合、きのこの周囲の気流にはどう影響するのでしょうか。

物体の表面に沿って流体が移動する時、第1仮説で挙げたような平滑な面であれば、流れが押し退けられて行く上流部分では流体の粘性によって生じた境界層は層流を保ったまま進みます。

Fig.2-2

しかし表面に小さな凹凸があった場合、その凹凸の部分に細かな乱流渦が発生します。この乱流渦により速度勾配が大きくなって摩擦抵抗は増加しますが、一方で層流のはく離を遅らせる効果があるのです。[Fig.2-2] その結果風下に発生する乱流の範囲が小さくなり、圧力抵抗が減少して空気の流れが減速しにくくなる効果を生むのです。

Fig.2-3

と理屈だけ並べても実感が沸かないかもしれませんが、じつはこの現象は実際に様々なところで応用されていて、有名な例としてはゴルフボールのディンプルによる飛距離の向上があります。またそれ以外にも航空機の翼に小さな突起(ボルテックスジェネレータ)を設けて飛行安定性を向上させたり[Fig.2-3]、水泳競技で一時話題となったサメ肌水着などもその一例でしょう。

Fig.2-4

ではここから本題です。第1仮説で説明したように風下の大きな乱流渦によって傘裏から放出された胞子が巻き上げられた場合、それが遠くに運ばれるためには、その上側の層流との距離は近い方が望ましいと考えられます。こう考えると層流が傘の表面からはく離する場所(はく離点)は傘の後端に近い方が有利となるわけです。[Fig.2-4]

これが流体力学的きのこの第2仮説、きのこの傘にある凹凸により上面の層流のはく離点が傘の後端により近付き、傘裏から放出された胞子を巻き上げる確率を上昇させるというものです。いかがでしょうか。


【この仮説における問題点】

  • 航空機など高速移動する物体においては効果を発揮するはく離点遅延の考え方を、微風下で静止したきのこに当てはめるのが適切なのか
  • きのこの傘のほぼ全面に無作為に配置されたイボなどの凹凸が、本当にはく離点の遅延に有効なのか

【参考文献】(敬称略)

『流れのふしぎ』遊んでわかる流体力学のABC
日本機械学会編 石綿良三・根本光正著(講談社ブルーバックス)

『鳩ぽっぽ』初心者のための航空力学講座
Oki (https://pigeon-poppo.com)

『機械設計エンジニアの基礎知識』流体力学の基礎を学ぶ
MONOWEB (https://d-engineer.com/monoweb.html)

『楽しい流れの実験教室』
日本機械学会 流体工学部門 (https://www.jsme-fed.org/experiment/index.html)

『旅客機の性能と安全性を高めるボルテックスジェネレータの研究開発』
JAXA航空プログラムグループ(航空プログラムニュースNo.25)


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