(流体力学的)きのこの第3仮説

揚力よさらば

【注意】
この話は科学に無知な筆者が付け焼き刃の知識を基に書いた、いわゆるエセ科学と同等の記事で、内容的な正確性は未検証です。

Fig.3-1

第1仮説、第2仮説ではきのこの傘がドーム状であることを前提に流体力学的な説明を試みましたが、実際のきのこの傘を見ると、全開しても半開き程度にしかならないものから、完全に水平に開き切ってしまうものまでその形状は様々です。[Fig.3-1] このような条件に対してはどのように考えればよいのでしょうか。

まず胞子を運ぶ空気について、無色透明で存在感は薄いのですが、流体力学上は粘性のある流体(粘性流体)とされています。この粘性が流れに及ぼす影響を表す指標に第1仮説でも名前の出たレイノルズ数があります。具体的には以下の式[Fig.3-2]で表現されるものですが、

Fig.3-2

このレイノルズ数が大きいと流れは粘度の影響を受けにくくなってはく離が発生しやすくなり、小さければ層流が保たれることになります。

Fig.3-3

注目すべきは、空気の粘度(動粘性係数)が同じなので、風が吹いている(U>0)限りは、流れ場の代表長さ(L)がゼロにならない限りレイノルズ数はゼロにはならなことです。きのこの傘の場合、代表長さは傘の厚みになりますから、3次元空間にいる限り決してゼロにはなり得ず、たとえ水平な円盤状であっても傘の後端にははく離による乱流が発生することになるのです。[Fig.3-3]

このように考えて行くと、じつはきのこの傘がドーム上である必然性は全くなく、第2仮説で説明したように、はく離点が可能な限り傘の末端にある方が傘裏から放出された胞子を巻き上げ易く散布に有利であれば、傘の開き方はむしろレイノルズ数がより小さくなる水平の方が有利と言えるでしょう。

Fig.3-4

実際、成長に伴って傘の開き方が大きく変わるテングタケ科のきのこでは、胞子が成熟した成菌になるほど傘が大きく開き、完全に成熟した状態ではほぼ水平に開き切るものが多くあります。[Fig.3-4]

もしドーム状の半開きが胞子散布に最も有利な状態であれば傘は上面が丸い状態で開くのをやめ、水平になるまで開くものは少ないのではないでしょうか。

そしてここからが本題です。以上の考察から、きのこの傘の開き具合は胞子の拡散に影響はするものの、風下に発生する乱流によって胞子が巻き上げられるという前提に立つ限り、ドーム状であることの優位性は全くないことになります。

これが流体力学的きのこの第3仮説、きのこの形状によって傘の上に揚力が発生したとしても、残念ながらそれは胞子散布には貢献しないというものです。いかがでしょうか。


【この仮説における問題点】

  • あくまで傘の風下側に生じる乱流説が成立していることが前提となっている
  • この説が成立するレイノルズ数の最低値について考察が及んでいない

【参考文献】(敬称略)

『流れのふしぎ』遊んでわかる流体力学のABC
日本機械学会編 石綿良三・根本光正著(講談社ブルーバックス)

『鳩ぽっぽ』初心者のための航空力学講座
Oki (https://pigeon-poppo.com)

『機械設計エンジニアの基礎知識』流体力学の基礎を学ぶ
MONOWEB (https://d-engineer.com/monoweb.html)

『楽しい流れの実験教室』
日本機械学会 流体工学部門 (https://www.jsme-fed.org/experiment/index.html)


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