(流体力学的)きのこの第5仮説

密なきのこに風は吹くのか

【注意】
この話は科学に無知な筆者が付け焼き刃の知識を基に書いた、いわゆるエセ科学と同等の記事で、内容的な正確性は未検証です。

ここまでの第1仮説から第4仮説では、きのこが単独で立っていることを前提に考察を行って来ました。しかし実際のきのこを見ると、密集して生えていることも少なくなく、極端なものでは上の写真のイヌセンボンタケのように隙間なくびっしりときのこが並んでいるものもあります。このような場合でも流体力学の見地から胞子散布に対する利点を説明し得るのでしょうか。

きのこが密集して並んでいる場合、個々のきのこは傘を接して並びます。この時、傘の下の柄は接してこそいないものの、隙間は狭くなっていることでしょう。ここに風が当たった場合、風は狭い柄の間を吹き抜けることになります。

Fig.5-1

このように狭い場所を気流が通過する状況を説明するのがベルヌーイの定理で、簡単に言えば「一つの流線上に存在するエネルギーの和は常に一定である」というものです。エネルギーの和とは大気の場合速度がマッハ0.3未満(非圧縮性流体)であれば運動(速度)・圧力・位置の三つで、きのこの生えている場所が水平だとすると位置エネルギーは一定なので、[Fig.5-1]のような関係になります。つまり狭い場所を通過する際、気流の速度は上昇し、一方で圧力は低下するのです。

Fig.5-2

この性質は実際にも様々な場所で応用されており、その一例が(現在は電子制御が主流となって少なくなりましたが)エンジンのキャブレターです。[Fig.5-2]

キャブレターでは吸気管の内部にベンチュリーと呼ばれる内径の小さい箇所があります。ここを空気が通ると流速が上昇し、一方で圧力が低下するため燃料が吸い出されるという、ベルヌーイの定理の通りの仕組みになってるのです。

Fig.5-3

ここできのこに話を戻しましょう。先に述べた通り、密集したきのこでは柄と柄の間に隙間の狭い場所が存在します。ここを風が通り抜けると、まさにキャブレターと同じことが起きると考えられます。つまり燃料ではなく、傘の裏側の担子器に付いている胞子が高速で圧力の低い気流によって吸い出され、風に乗って後方に運ばれるのです。[Fig.5-3]

でもこのようなことが本当に都合よく起きるのでしょうか。残念ながら実際に検証を行ったわけではないので断定はできませんが、イヌセンボンタケでベルヌーイの定理による胞子の吸い出しを窺わせる光景を見ることがあります。

Fig.5-4

[Fig.5-4]の写真ではイヌセンボンタケの密集した中に傘が粉を被ったように黒っぽくなっている部分が見られます。イヌセンボンタケの胞子は成熟すると黒くなるため、傘の黒くなった部分は胞子が付着しているのですが、もし気流が胞子を吸い出さなかったとすると、中心部の傘は白いまま残ると考えられるのです。

これが流体力学的きのこの第5仮説、密集したきのこではその間を気流が抜ける際、ベルヌーイの定理により胞子が吸い出されて空中に放出されるというものです。いかがでしょうか。


【この仮説における問題点】

  • 微風の中で静止しているきのこにおいても、ベルヌーイの定理を適用し得るのか
  • 運動エネルギーが摩擦により熱エネルギーに変わるなど、ベルヌーイの定理の外でエネルギーの損失が発生する可能性について考慮されていない

【参考文献】(敬称略)

『流れのふしぎ』遊んでわかる流体力学のABC
日本機械学会編 石綿良三・根本光正著(講談社ブルーバックス)

『鳩ぽっぽ』初心者のための航空力学講座
Oki (https://pigeon-poppo.com)

『機械設計エンジニアの基礎知識』流体力学の基礎を学ぶ
MONOWEB (https://d-engineer.com/monoweb.html)

『楽しい流れの実験教室』
日本機械学会 流体工学部門 (https://www.jsme-fed.org/experiment/index.html)


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